ケアマネジャー(介護支援専門員)を目指してみようかしら?
とはいったものの、ケアマネは正直どのような仕事をしているかわからない。調べても難しい法律用語や専門用語ばかりで全体がつかめない…。
ケアマネジャーの仕事内容や求められている役割について、法律用語抜きに厚労省よりわかりやすくまとめました!
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは
介護保険法で定められている介護の専門職
ケアマネジャーは法律上の正式名称を「介護支援専門員」といいます。介護保険法で定められている公的な資格(国家資格ではない)です。
ケアマネジャーはケアマネジメントを行う介護の専門職種です。ケアマネジメントとは、いわば、利用者のケアの戦略のこと。その戦略の考案と管理がケアマネジャーの仕事です。
ケアマネジャーの仕事は、大きく分けてケアプランの作成と、給付管理業務の二つを行います。
ケアプランの作成
ケアプランは法律上の正式名称は「居宅サービス計画書」といいます。これを作成するのがケアマネジャーの本質的な仕事です。
ケアプランは、第1表から第7表まであります。
特にサービスの提供前に必要な第1表~第3表を作成するにあたって、利用者の状態を詳しく観察し、どのような目的で、どのサービスをどの程度提供すればよいのかを考え、その結果をプランに書き込みます。
給付管理
もう一つは給付管理業務です。ケアプランに位置づけられた介護サービスの金銭の管理を行うことです。事務員に任せたり、PCのソフトで大部分をケアできるため、ケアプラン作成と比べるとそれほど大きな業務ではありません。
ケアマネジャーの役割
ケアプランと給付管理をする公的資格なのはわかった。けど、それがどうしたのでしょうか。
ここでは、ケアマネジャーの役割について解説します。
利用者の介護の参謀役
介護は1人の利用者に対し、いくつかの事業所、多くの職員で提供されます。つまり、「介護チーム」です。
この、介護チームの中でどのような役割を果たすのかを考えるとわかりやすいでしょう。
例えば医師は診断や治療、介護職は生活上の支援や身体介助、理学療法士はリハビリテーションを行う役割があります。
この介護チームの中で、ケアマネジャーは「利用者の介護の参謀役」という位置づけになります。
「参謀」とは、軍隊や企業などで戦略を考える人のことです。戦争や経営の目的達成(勝利や売り上げ目標の達成など)にむけてどのように予算や人材を管理・運営をするか…つまり戦略を考案し、TOPに進言する役割の人です。
直接自分が戦闘や生産に加わることはありません。
ケアマネジャーは、利用者のQOLを高めるという目的のために、いろいろな介護サービスや利用者の住んでいる地域の機関や人々の協力(社会資源)を活用すればよいか、その戦略を考案し、TOP(=利用者)に進言します。
大将(意思決定者)は利用者
軍隊では、参謀はあくまでも戦略・作戦を考えるだけで、それを実行するかどうかは大将(その軍のTOP)が行います。介護チームに置き換えるとTOPは利用者ですから、決められたケアプランの内容に利用者自身が納得し、同意しなければその作戦(ケアプラン)は実行されません。
作戦を立てるからと言って参謀が一番偉いわけではありません。これはつまり「利用者本位」の思想のことを言っています。あくまでも決めるのは利用者自身です。
兵隊(支援をする人)は直接援助職
参謀は自ら戦闘行為はしないように、実際の支援をするのは直接援助にかかわる人たちです。ケアマネジャーはもともと介護福祉士や看護師の方が多いため、何かと手が出そうになりますが、あくまでも戦略・作戦を考える人として、利用者やチームの状況を観察し、支援がうまくいくように助言や調整をすることが最も求められています。
ケアマネジャー自身が直接手を下すのではなく、直接援助職の人々がベストな支援をしてくれるような間接的な働きかけが求められるため、高度な知的能力が必要な職種といえます。
ケアマネジャーの仕事内容
ケアマネジャーの仕事内容はかなり大きく分けるケアマネジメントプロセスを行うことと、事務作業の2つです。メインの仕事はケアマネジメントプロセスを回すこと。それ以外が付随業務という位置づけです。
ケアマネジメントプロセス
ケアマネジメントプロセスとはこれまで言っていた「参謀としての仕事」を具体化させたものです。
介護が必要になった利用者にどのようなケアを提供すべきかを考え(インテーク・アセスメント)、計画を立て(プランニング)、チーム全員にプランの説明(作戦の説明:サービス担当者会議)実行の様子を見て、プランを変更するかどうかといった運用(プランニング)を行います。
事務作業(給付管理など)
その他事務作業を行います。給付管理などもここに含まれます。
ケアプラン点検への対応や市町村開催の地域ケア会議への参加なども業務の一つです。これについては後日まとめます。
ケアマネジャーになるには
ケアマネジャーは都道府県に登録され、「介護支援専門員証」を交付されることでなることができます。
そのためには基礎資格を持ったうえで実務経験を積み、介護支援専門員実務研修受講試験合格後、実務研修を受ける必要があります。
基礎資格+実務経験
まずは「基礎資格」と呼ばれる医療・介護系の資格を持った人が実務経験を5年積むことで受験資格を得られます。必要な基礎資格は以下の通りです(2022年現在)。
- 医師・歯科医師
- 薬剤師
- 保健師・助産師
- 看護師・准看護師
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
- 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉
- 視能訓練士
- 義肢装具士
- 歯科衛生士
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師・柔道整復師
- 栄養士
特例として、上記の資格がなくても、法律で定める生活相談員などの特定の実務経験がある人は受験することができます。詳しい受験資格については次の記事もご覧ください。
試験合格と実務研修
上記の条件を満たした人は晴れて試験を受けることができます。これは都道府県が実施する「介護支援専門員実務研修受講試験」というもの。
なぜこんな名前かというと、実はこれ、ケアマネになれる試験、ではなく、「ケアマネになるための“実務研修”を受講する資格を問う試験」だからです。
試験に合格すると87時間にもわたる「実務研修」を受けなければなりません。これは最後に修了評価試験がありますが、基本的には簡単なものばかりですし、落ちることはありません。
ただ、長時間業務から離れなければいけないこともあり、なかなかヘビイです。
しかし、これを受けきると晴れて介護支援専門員(ケアマネジャー)としての登録を受けることができます。
ケアマネジャーに向いている人
ケアマネジャーに自分が向いているのかどうか、気になっている人もいるかと思います。そこで、現場で活躍で来ているケアマネジャーに共通している3つのことをご紹介します。
書類管理に慣れている人
ケアマネジャーは「居宅サービス計画書(ケアプラン)」を作成する仕事と言っても過言ではありません。ケアプランだけで何表もある上に、ケアプランを形にするための書類などもあり、複数の書類に埋もれてしまうといったこともしばしばあります。
こうした書類を一つ一つ処理していくことができる人がケアマネに向いていると言えます。
「介護記録だけで手いっぱい」といった、書類仕事に慣れていない人は少し厳しいお仕事かもしれません。
マルチタスクが得意な人
ケアマネジャーは最大で一気に35名まで利用者を担当できます(例外アリ)。大体35ギリギリまで迄ケースを持っている方が多く、症状の似ているAさんとBさんでサービス担当者会議の日程を間違えちゃった…なんてこともあります。
そのため、一度に複数の案件が持ち込まれても混乱せずスマートに仕事をこなせる力、マルチタスクが得意な人はケアマネに向いていると言えるでしょう。
向上心のある人
ケアマネジャーは利用者の情報を論理的に処理したり、更新される医療情報を把握したりする必要があります。なかでも、膨大かつ複雑な介護保険法が3年に一度更新されるため、常日頃からの情報収集が必要です。
さらに(まだあるの!?)、ケアマネジャーは更新研修を始め多くの研修の受講義務や推奨があり、常日頃から学ぶ姿勢=向上心のある人でないと成り立たない面があります。
逆に常に何かしら上を目指して働きたい!という人には適任の仕事かもしれません。