アセスメントは介護福祉の専門用語ではなく、環境分野や経営コンサルタントなど、あらゆる場面で使われ、多くは「評価」「査定」と言った訳語が当てられます。
介護福祉、特にケアマネジャーにとってのアセスメントとは、利用者の生活課題とその原因が何かを考えることです。
とはいえ、抽象的で何のことかわからないですよね。そこで、ケアマネジャーにとってのアセスメントについて、厚労省よりわかりやすく解説します!
アセスメントの必要性や意味についてより深堀している記事もつくりました!
アセスメントとは
言わずと知れたケアマネジャーは利用者のケアプランを作成する仕事です。アセスメントは、そのケアプランをどんなプランにするかを考える際の思考そのものを指します。
ケアマネのテキストなどに書いてあるケアマネジメントプロセスのなかで、「プランニング」の前に位置づいているのも、その理由からです。
〔ケアマネジメントプロセス〕
1)インテーク(初回面接)
2)アセスメント
3)プランニング
4)モニタリング
5)再アセスメント
利用者の生活課題とその「原因」を探ること
では、具体的にどんなことをするのでしょう?それは、次の通りです。
どのようなことでも、課題と原因がわからなければ適切な対処はできません。
例えば消防署に「煙が煙くて仕方ない」と通報が入ったたとき、その通報者の訴えをうのみにして煙を払うだけの消防士は存在しません。普通は煙の原因である「火元」を探し、煙そのものを元から消そうとするはずです。
アセスメントも、利用者の生活の状況(QOL)を悪くしている火元(原因)を探し出さなければ、一向に改善しないでしょう。この火元を探すのがアセスメントであり、ケアマネジャーの役割です。
「あるある」なのは、例えば「調理・入浴・掃除ができない」という利用者のアセスメントをせず、短絡的に訪問介護を入れてしまうなどです。それらができない原因は、実は膝の痛みがあり、またぐことや長時間の立位ができないことからだったらどうでしょう?
膝痛への対処や膝に負担のかからない体制整備(座って調理できる環境とか)をすれば、長時間の訪問介護に頼らなくても利用者の「望む生活」がし続けられる場合もあります。このように、原因を押さえて支援方法を考えることはとても重要です(画像参照)。
ケアマネジメントの中で最も重要
『ケアマネジメントは1にアセスメント、2にプランニング』
と言われるほどアセスメントは最も重要視されるプロセスの一つです。
先ほどの膝の痛みのある利用者の例を考えてみましょう。
膝の対処だけすれば介護負担は少ないばかりか短期間で済む可能性があります。しかし、原因を考えずにいちいち調理や掃除の支援を入れると訪問介護の時間が膨大になります。
介護費用がかさむばかりか、利用者もできていた生活動作ができなくなり、老化や介護度の重度化につながるかもしれません。
発熱患者に対し、原因を考えずに解熱剤を投与する医師はいません。介護も、アセスメントによって介護が必要になった原因や課題をはっきりさせることが適切なケアをするための第1歩です。
アセスメントのやり方
アセスメント=情報収集+情報分析
利用者との面接のこと「アセスメント」とする人もいますが誤解です。アセスメントは利用者の情報を集めるだけでなく、その情報から課題の原因を突き止めるための「情報分析」も必要だからです。
意外と情報を収集して満足している人もいますので、それだけではない、ということを覚えておく必要があります。
情報収集
情報収集は「何の情報を集めるか」と、「どのように情報を集めるか」の2つに分かれます。
1)何の情報を集めるか
まず、何の情報を集めるかは、各事業所が定める「基本情報」とか「フェイスシート」の枠組みに沿います。
多くのケースで、ICFの枠組みに沿って収集すると利用者の生活の全体像がもれなく集められてよいです。
2)どのように情報を集めるか
次に、どのように情報を集めるか(情報収集の方法)は、以下の通りです。
いずれにしても、「バイステックの七原則」を守っていることとか、「傾聴・受容・共感」ができるといったコミュニケーション技術が大切になってきます。
情報分析
情報分析は、やり方が抽象的なのでケアマネジャーを悩ませています。
色々な考え方がありますが、共通しているのは、「物事の因果関係をよく考えて、より本質的な原因を探し当てる」ということです。
例えば調理ができない、といわれたら、「なぜ調理ができないのか?」と考えます。「長く立っていられなくて…」とくれば、「なぜ長く立っていられないのか」とどんどん原因を考えていきます。
このように原因を考えていくときに、本人に根ざすいくつか同一の原因が出てくるはずです。それがとりあえずの本質的な原因に近いと考えられます。
例えば立っていられなくて調理ができない人は、同時に掃除もできないはず、この場合「立っていられない」ことが本質的な原因の可能性があります。
一方で「掃除してくれる家族が来なくなった」というのは、環境の変化であって本質的な原因ではありません。家族がいなくたって掃除ができる人がたくさんいることから「本質的ではない」とわかります。
慣れが必要
アセスメントは実践の科学。本などから学べることはあっても、マスターするには経験と慣れが必要です。
料理もレシピ(←知識)があっても、三ツ星シェフと普通の人が作るのとでは味が全く違うでしょう。同じように、アセスメント力(りょく)を高めるには知識を仕入れるとともに、何度も実践して、「三ツ星(のような)ケアマネ」になることが重要です。
ケアマネはアセスメント不足?
「ケアマネジャーのケアプランにはアセスメントが足りていない」という指摘が前々からなされています。特に2013年に厚生労働省の内部に作られた介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会という仰々しい検討会がまとめた『中間的な整理』という報告書には以下のように書かれています。
利用者像や課題に応じた適切なアセスメント(課題把握)が必ずしも十分でない
厚生労働省『介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理』2013年
実際、どんな利用者でも内容が同じ「金太郎飴プラン」とか、利用者の言いたいことにただ従っただけの「御用聞きプラン」などと揶揄されるプランが多く、ケアマネ不要論やケアマネ有料論が言われている原因の一つになっています。
2013年と10年前の報告書ですが、今でも取り下げられることなく生きている報告です。
もちろん、素人にはとてもまねできない素晴らしいプランを作成しているケアマネジャーも多くいらっしゃいますが、そうした指摘が国単位でされてしまっているということは知っておいた方がよいでしょう。
アセスメントのおすすめ書籍
情報収集
情報収集においてケアマネ関係の書籍って実はあまりありません。しかし対人援助というくくりで行くと、いくつかの素晴らしい書籍が存在します。それがこの『対人援助の現場で使える 聴く・伝える・共感する技術 便利帖』。
相手に安心してもらうためのいわゆるコミュニケーション技術について、わかりやすく要点が表や図で表現されていて、理解しやすく作られています。事例も載っているため実践でどのように応用するか藻想像しやすいです。
情報分析
情報分析において抜群にお勧めしたいのは『アセスメントに自信がもてる! アローチャートガイド』。いわゆる「アセスメントの情報分析」の方法をめちゃくちゃ明快に説明してくれています。
アローチャートとは「アロー(矢印)」を使った「チャート」のこと。集めた利用者の情報から『原因と思う情報→結果と思う情報』と、因果関係を矢印で結んでいくだけです(例:認知症→見当識障害→ここがどこかわからない→不安→帰宅願望が出る)。
こんな簡単?と思うかもしれませんが、複雑な利用者の情報を図でシンプルに表すと、直感的に理解しやすく、先ほどのこのサイトの説明の何百倍もわかりやすくなります(苦笑
このサイトでは、このようにケアマネジャーの「一生使える知識」を随時更新中です。ほかにもいろいろな記事がありますので是非ご覧になってください。