ケアマネジャー(介護支援専門員)は介護のコーディネーターとしてとても魅力ある仕事です。
しかし、資格の取得条件がなかなか複雑なうえに、行政の案内も複雑でよくわからない場合が多いです。
そんな、ケアマネジャーになりたいけど、受験資格や資格の取り方がよくわからない、という方に、ケアマネジャーになるために必要な受験資格や試験の詳細、どんな勉強が必要か、そして資格取得後の更新についてなど、厚労省よりわかりやすく解説します!
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは
「ケアマネジャーとは」って、難しい問いなんですよね。介護職は介護をするし、医者は医療を提供します。同じ文脈で言うと、ケアマネジャーはケアマネジメントを提供するのですが、それだとなんだか抽象的ですね。
ケアマネジャーは
(1)利用者からの介護ニーズを聞き取って、適切なサービスに結び付ける
(2)それをプランに落とし込んで「計画」として介護の実行状況のチェックをする
という、2つの役割をもった職業です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
もう少し厳密に言うと、ケアマネジャーは、介護保険法上の言葉では介護支援専門員と言います。通称「ケアプラン」(居宅サービス計画書や施設サービス計画書)を作成し、利用者の介護の実行状況を利用者の意思に基づいて管理・運営します。
ちなみに医療も症状や患者の特性によって長期的な診療計画を組むことがありますが、これらは医師が兼任しています。(看護計画は看護師)
ケアマネジャーになるには(受験資格)
ケアマネジャーになるには、なる前に、所定の基礎資格を保有し、5年以上の実務経験が必要です。
なぜ試験だけではなく、基礎資格や実務経験も必要なのかというと、まずケアマネジメントは「新たな知識を得て行う仕事」というよりは「すでに知っている知識をいかに活用するかという仕事」という側面が強いため、その知識をすでに得ているという前提の資格が必要だからです。
実務経験が必要なのは本や講義からの知識では得られない経験値が必要だからではと思われます。
資格がない場合は残念ですが資格を取り、実務経験のない場合はその仕事に5年は従事しなければなりません。
なお、試験を合格した後も、所定の研修を受講する必要があります。面倒ですが、それだけしっかりとした資格なのです。
試験を受けるために必要な条件は以下の通りです。
900時間というのは普通は実質5年以上になります。自らの業務が実務経験に換算できるかとか、実務経験の換算方法などについてはご自身の職場などにご確認ください。
基礎資格のある人
必要な基礎資格は以下の通りです。
出典:介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第113条の2を参考
上記の医療や介護などにかかわる国家資格を取得しておく必要があります。
ケアマネジャーの創設当初は看護師の受験者割合が高かったのですが、段々と減り、その代わり介護福祉士が増えていき、最新(24回)の試験では約60%が介護福祉士の方の受験です。
基礎資格のない人
ケアマネジャー試験は基礎資格のある人を前提とした資格ですが、資格がなくても施設などで相談援助業務を行っていれば受験資格にすることができます。
出典:介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第113条の2を参考
資格取得までの流れ
資格取得までは 申し込み → 試験の受験 → 実務研修 の3ステップです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
申し込みと必要書類
ケアマネジャーの資格は都道府県が管理しています。そのため、申し込みは都道府県単位でやっています。例えば東京都で申し込んだ場合、神奈川県では受験ができず、東京都でしか受験できません。
試験の案内方法や申し込みの方法なども都道府県ごとに異なるので、ご自身の受験される都道府県窓口でご確認ください。例えば東京都は以下が窓口です(2022年はすでに終了)。
その他、試験までに引っ越しの予定がある人、県境に住んでいる人などはどこの都道府県にすればよいか都道府県の窓口などで事前に確認しておきましょう。
実務研修受講試験の内容
試験はおおむね10月第2日曜日に行われます。ただし、過去にはいろいろと変更したこともあり、今後も変更の可能性もあります。受験される際は必ず事前に確認しておきましょう。
試験内容は「介護支援分野」が25問、「保健医療福祉サービス分野」が25問の計となっています。
介護支援分野 | 保健医療福祉サービス分野 |
---|---|
・介護保険法の概要 ・介護支援専門員の運営基準等 ・加算等、報酬 ・事例問題 | ・疾病、疾患などの医学知識 ・食事、睡眠などの介護知識 ・SWなどの相談援助技術 ・障害者総合支援法等関連法令 |
難易度をどう感じるかは人によりますが、ややこしい法律の文体に慣れていない人は最初は少し苦労するかもしれません。ただ、業務に関連することも多く問われるため、全く解けないという事はないと思います。
介護福祉士や社会福祉士の勉強をしている方は重複している分野もあり、受験経験も活かすことができるために有利かもしれません。
学習方法については以下の記事でもまとめていますのでもしよければご覧ください。
実務研修の内容
ケアマネジャー試験は正式名称を「介護支援専門員実務研修受講試験」といいます。実はペーパーテストはこの「実務研修」を受ける資格があるかどうかを問う試験であり、ケアマネジャーの資格を正式に得るにはこの実務研修を修了しなければなりません。
実務研修は、講義形式と演習形式があり、87時間あります。1日7時間みっちりやったとしても2週間近くかかります。落ちることはありませんが、修了評価もあるため、「試験後の消化試合」という気分で臨むと痛い目を見るでしょう。
前期課程 | 講義形式 |
実習 | 1日、実際の居宅介護支援事業所で実習 |
後期課程 | 演習・グループワーク |
また、実務研修は、法律や医療の知識を覚えるだけだったペーパー試験に比べ、実際の利用者へのアセスメントの方法やプランニングの仕方なども学べるため、より実践的でケアマネの本質に近いことが学べます。自分のケアマネジメントスキルの早期熟達のためにも真剣に臨んだ方がよさそうです。
資格の更新について
ケアマネジャー資格は取得して終わりではなく、更新しなければなりません。介護支援専門員証の有効期間は5年間です。ただ、更新1回目の人は就業後6か月以上1年以内に受ける研修があります(後述)
また、基本的には研修を受けるだけですが、資格更新1回目と、2回目以降でルートが異なりますのでご注意ください。
資格更新1回目
資格更新が取得して1回目の人はまず資格取得後6か月以上たつと、「専門研修課程1」を受ける必要があります。
その後、資格取得後5年で専門研修課程2もしくは更新研修を受講する必要があります。
資格更新2回目以降
資格更新2回目以降の人は、専門研修課程1は受講の必要がありません。ただ、5年に一度、必ず更新研修を受講する必要があります。
資格取得後の段階 | 受ける研修 |
---|---|
資格取得後6か月 | 専門研修課程1 |
資格取得後5年まで | 専門研修課程2 または更新研修(※) |
以後、5年ごと | 更新研修 |
資格失効の人 | 介護支援専門員再研修 |
ここまで見たようにケアマネジャーの資格維持のための研修体形は非常に複雑で、まれに改正も挟みます。ご自身がどのケースに該当するかはご自身で責任をもってご確認ください。
また、大きなカリキュラムは厚労省が定めた内容に準拠する形になりますが、それ以外の細かい研修の進め方、使用テキストなどは統一されておらず、都道府県によって大きく異なるためご自身の所属する都道府県での確認が必要です。
主な仕事内容
ケアマネジャーの仕事はケアプラン作成がメインですが、働く場によってさまざまな業務があります。
資格の活かし方は様々ありますが、主な「場」は以下の3つです。
介護保険施設ではここ最近の人手不足のため介護の仕事をしながらケアプラン(施設サービス計画書)を作成するところが多いようです。地域包括支援センターはケアマネジャーの上位資格である「主任介護支援専門員」の資格が必要です。
そのため、ケアマネジャーを専業としたいと考える人はまずは居宅介護支援事業所で働くのが良いでしょう。
いずれにしても利用者や利用者にかかわる家族、それを支える専門職の事情を俯瞰的に把握し、それを踏まえたうえで適切なプランの立案や介護の助言をするのがケアマネジャーです。とても難しい役回りですがそれゆえにやりがいのある仕事です。
例えば、認知症の人が同じことを繰り返し言う場合、本では「否定せず、話に付き合う」と書いてありますが、実際にそれを行うと会話が無限ループしていつまでも終わらず、忙しい中では対応が難しいです。これは本からではなかなか得られない経験です。
そういう場合の対応方法だけでなく、「本では語られない苦労がある」ということを知っている、という経験があることはケアプラン作成だけでなく、家族への対応にも一役買うはずです。