介護予防・日常生活支援総合事業とは?│厚生労働省よりわかりやすく解説

介護予防・日常生活支援総合事業とは 戦後政策

ケアマネの試験でもよく出る『介護予防・日常生活支援総合事業(以下:総合事業)』。名前も長ければ意味も不明で困っている人も多いはず。

総合事業は国が進める「地域支援事業」の中核を担う事業で、今後も拡充が行われるであろう事業ですので、覚えておくと業務にも役立ちますし、ケアマネ試験を受験される方にも試験を優位に進めていくのに非常に重要です。

ここでは、総合事業について厚生労働省の説明よりもわかりやすく解説します。

介護予防・日常生活支援総合事業とは

介護予防・日常生活支援総合事業(以下:総合事業)は略して総合事業と言われます。

介護保険法で位置づけられている行政が行う事業です。

地域支援事業の主役事業

「地域支援事業」という国が行う介護予防と地域福祉事業の中核的役割を担う事業です。

地域支援事業についてはこちらもご覧ください。

「地域支援事業」はその下に「総合事業」と「包括的支援事業」「任意事業」の3つの事業がぶら下がっています。しかも、その3つの事業の下にさらに20の事業がぶら下がるという大変複雑なつくりをしています。

その中で、「総合事業」は地域支援事業の主役を担う事業。複雑な代わりに覚えておくメリットはとても大きいです。そこで、次では何のために行う事業なのか、どのような事業なのかをご説明します。

「介護予防」を利用者に提供する事業

総合事業を構成する地域支援事業は、介護予防に特化した事業ですが、総合事業は、その地域支援事業の中で実際の高齢者にサービスを行うための事業です。

その他の2事業「包括的支援事業」は地域支援事業の陣頭指揮をとる「地域包括支援センター」の整備、「任意事業」は市町村の体制整備といういわば「後方支援的」な事業です。

具体的にはケアマネジメント(いわゆる「ケアプラン」の作成等)や訪問介護・通所介護の実施など介護給付に似たサービス展開です。しかし、介護給付などと違い、内容がより簡素であったり、規制が緩かったりします。詳しくは後述します。

「予防給付」から移動してきた訪問・通所介護の受け皿

2014年まで、要支援者向けのサービスである「予防給付」には「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」がありました。しかし、厚労省内の検討会議で、介護保険財政がひっ迫する中、これら二つが安易に使用され、本当に必要なのかどうかという議論が行われました。

具体的には…

例えば、自分で掃除ができたり家族が手伝えたりするのに「ちょっと大変だから」といった理由で訪問介護を使用したり、単なる友達作りだけの目的で通所介護を使用したり、といった具合です。

そこで予防給付による訪問・通所介護を廃止しようという声もあがりました。ただ、適切なアセスメントに基づけば、これらのサービスも必要であるという反論もなされました。

会議の画像はイメージです

結果として、地域支援事業の総合事業内(介護予防・生活支援サービス事業内)にこれを「第1号訪問事業」「第1号通所事業」と位置付けることで、より予防的側面を意識するなら存続OKということになりました。いわば、予防給付からは廃止され、そっくりそのまま地域支援事業に移行したということです。

このように総合事業は予防給付から移動してきた訪問・通所の受け皿となったわけですが、財源構成などが若干変わっただけで、サービスを受ける側にとっては何ら変わりのない制度変更(ただ複雑になっただけ)とも言えます。

介護予防・日常生活支援総合事業の内容

では、総合事業は具体的にどのような事業になっているのでしょう。細かい話は紙面の関係上割愛しますが、ざっくりとアウトラインでもつかめるようになっていただければと思います。

介護保険法第115条の45以下に記載されている

法律条文など、覚えても意味がないのですが、総合事業の条文だけは結構参考になりますので、もし余裕がある方は覚えておくとよいかもしれません。総合事業は介護保険法の「地域支援事業」という章に具体的に記載されています。

介護保険法(抜粋)
第6章 地域支援事業
(地域支援事業)
第115条の45 市町村は、被保険者の要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止及び地域における自立した日常生活の支援のための施策を総合的かつ一体的に行うため、厚生労働省令で定める基準に従って、地域支援事業として、次に掲げる事業(以下「介護予防・日常生活支援総合事業」という。)を行うものとする。(以下略)

まず2つに事業に分けられる

総合事業はいくつかに細分化されたさまざまな事業の名称です。まず、総合事業の下にはさらに2つの事業があります。
それが、「一般介護予防事業」、「介護予防・生活支援サービス事業」と題する事業です。

そしてこの2つの事業も、さらにその下にいくつもの事業がぶら下がっています。これが総合事業を難しくしている原因でしょう。

一般介護予防事業

一般介護予防事業は、要支援者や要支援者になりそうな人を要介護状態にしないために食い止めるためのあらゆる事業のことを言います。具体的には以下の5事業があります。

それぞれの事業の中身については市町村実施であり、市町村によって大きく異なります。そのため詳細はご自身の市町村に確認していただくほかにありません。ケアマネ試験にもそこまで具体は出ないため重要度は低めです。
それでも詳細が気になる方は下記厚労省の資料を是非ご覧ください。

一般介護予防事業の対象者

一般介護予防事業はすべての高齢者が対象になります。

例えば…

介護予防普及啓発事業の中には「体操教室や講演会などの開催」が事業内容に含まれますが、これは65歳以上の方(厳密には介護保険の第1号被保険者)であればだれでも利用することができます。

一般介護予防事業のサービスの提供者

一般介護予防事業内で行われるサービスの提供者は市町村になります。

例えば…

先ほどの介護予防普及啓発事業で行われる「体操教室や講演会などの開催」も、市役所の職員が企画し、運営します。場合によっては民間の業者などに委託することも可能です。

介護予防・生活支援サービス事業

介護予防・生活支援サービス事業の下には「第1号訪問事業」「第1号通所事業」「第1号生活支援事業」「第1号介護予防支援事業」と4種類あります。

介護予防・生活支援サービス事業の内容

資料・テキストによっては
第1号訪問事業=訪問型サービス
第1号通所事業=通所型サービス
第1号生活支援事業=その他生活支援サービス
第1号介護予防支援事業=介護予防ケアマネジメント

と呼ぶこともあります。2号以降はどこ行ったの…

怖いのは、これらの下に3~5つのサービスがさらに位置づいていることです。すべて覚えるのは生産的ではありません。ポイントをいくつか覚えておくだけでよいです。

第1号訪問/通所事業では、その下にそれぞれ5つ(通所は4つ)のサービスが位置づいています。要はこれらはすべて訪問介護と通所介護のことです。ただ、2014年まで予防給付から支給されていた介護予防訪問介護/通所介護とより基準の緩いサービスや地域住民が行うサービスなど、規制が緩く、簡素なサービス後世になっています。

以下は厚労省資料から。訪問と通所のサービスの詳細が書かれています。特に「サービス種別」の欄が、それぞれの事業のなかに位置づく5つ(4つ)のサービスのことです。

介護予防・日常生活支援総合事業の
基本的な考え方・訪問型サービス
出典:厚生労働省老健局振興課『介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方
介護予防・日常生活支援総合事業の
基本的な考え方・通所型サービス
出典:上記と同じ

その他の事業に関しても考え方は同じですが、簡単に。

第1号生活支援事業(その他生活支援サービス)
訪問・通所介護以外の介護サービスで、地域住民やボランティアなどが提供するサービス。地域包括ケアシステムが求める「住民同士の助け合い」を具現化させようとしているサービス。

第1号介護予防支援事業(介護予防ケアマネジメント)
ケアマネジャーが行うケアマネジメントの介護予防版です。実施するのは地域包括支援センターで、ケアマネジャーではありません。また、サービスによってはモニタリングが省かれていたりと、簡素になっています。

介護予防・生活支援サービス事業の対象者

一般介護予防事業と異なり、介護予防・生活支援サービス事業の対象者は要支援者と「基本チェックリスト」という国が用意したチェックリストの該当者が対象となります。これに該当しない一般の高齢者はサービスを受けられません。

基本チェックリストとは

「公共交通機関に一人で外出できているか」「口の渇きが気にならないか」など25項目が並んだ、要介護認定の認定調査の簡易版のようなリスト。1~5の間に何個、計何個以上で○○といった形で使用する。
→リストの詳細は厚労省Webサイト参照

介護予防・生活支援サービス事業のサービスの提供者

一般介護予防事業と違い、介護予防・生活支援サービス事業は、さまざまな主体がサービスを提供しています。

まず、第1号訪問/通所事業でも、居宅サービス事業者やボランティアなど多彩です。詳細は上記の厚労省資料の図の「サービス提供者(例)」をご参照ください。

覚えてしまえば後々有利になる

介護予防・日常生活支援総合事業は大変複雑な事業ですが、国や市町村が最も重視している事業ですし、ケアマネ試験での出題頻度も非常に高いです。したがって、一度覚えてしまえば逆に今後の強い味方になるでしょう。

今後も制度の拡充が図られていくことでしょうから、今後の制度改正の動きについても要注目です。